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2023.02.09

信州大学工学部とロボットの作業手順を提案する知能システムを共同開発

 エプソンアヴァシス株式会社および信州大学工学部のアーノード・ソービ准教授、山崎公俊教授からなる研究グループでは、ロボットのための新たな知能システムを開発しました。この知能システムを用いれば、ロボットは作業の手順を自ら考え出し、ユーザーが指定したとおりに物品を配置することなどができるようになります。この成果は、エプソンアヴァシス株式会社と信州大学工学部による人工知能共同研究講座での研究活動に基づくものです。詳細はIEEE Robotics and Automation Lettersに掲載されています[1]。

1. 概要
 私たち人間は、何らかの目標を達成するために頭の中で常に行動計画を立てています。そこでは、次の認知機能が中心的な役割を果たしていると考えられます。
 1. アフォーダンス(可能行動)認識:ある状況において自分がとれる行動を認識する機能
 2. 行動後の状況の予測:行動をとった結果、状況がどのように変わるかを予測する機能
本研究では、これらの機能を備える新たな知能システムを構築しました。


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                        図1

 知能システムが動作する流れは次のとおりです。まず、カメラ映像を通して現在の状況を把握し、そこでアフォーダンスを認識します。例えば図1のように手が届く範囲にカップがあれば、「カップを掴む」というアフォーダンスを認識します。そして、カップを掴んだら、次にそのカップを持った状況でのアフォーダンスを認識します。図1の例では、「カップをお皿に乗せる」や「カップを違う場所へ運ぶ」などです。

 アフォーダンスを利用して行動し、目標を達成するには、それぞれの行動がもたらす効果、すなわち行動後の状況を予測できる必要があります。多くの従来手法では、この状況予測は設計者によって定められたルールに基づいて行われています。例えば、「XをYに載せる→ XがYに載っている」のようなルールが使用されます。しかし、現実世界は複雑ですからこのようなルールで完全に記述することは困難です。先述の例では、不安定な置き方でXを置いてしまった場合、XがYから転げ落ちるなどによりルールに沿わない状況が生まれかねません。
 提案手法では、行動後の状況予測にルールを使用しません。その代わりに、ロボットが過去に行動した経験に基づいて、状況予測の能力をニューラルネットワークに学習させます。学習を終えたニューラルネットワークは、現在の状況およびそこで取らんとする行動から、行動後 (つまり少し先の未来) の状況を予測することができます。このとき上記のアフォーダンス認識を行うことで、未来の状況において取りうる行動をリストアップすることもできます。さらに、アフォーダンス認識と状況予測を交互に行えば、現在置かれている状況を出発点として、ロボットが実現しうるもっと先の未来の状況も予測することができます。そうして得られる多様な予測の中から目標を達成できるルートを見つけることができれば、それを実現する行動列も明らかになります。図2はこの流れを示しています。

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                         図2

2. 今回の成果
 提案手法の有効性をシミュレーションにより検証しました。まず、テーブル上に置かれた複数の物品(ボール、カップ、ブロック)をロボットアームが操作できるようにしました。そして、物品を持ち上げたり動かしたりすることで行動経験を収集し、状況予測の能力を学習させました。その後、行動の順番、物品配置の安定性、物品同士の相互作用などを理解していることが求められる課題を用意し、知能システムがこれらの課題を解けることを確認しました。図2に課題の一例を示します。他のシミュレーションの様子も動画[2]で見ることができます。
 提案手法の特徴の一つは、人間がルールを与える方式では実現できない粒度での状況予測を可能にしていることです。さらには、設計者が想定しなかった解決策が得られる場合もあります。検証実験では、「ブロックの上に載ったボールを、ブロックを傾けることで視野外に転がり落とす」ことで、「ボールを視界から消す」という目標が達成された事例もありました。

3. 今後の予定
 今後は、ロボットの行動レパートリーを拡張したり、ユーザーが文章を与えることにより目標を指定できるようにします。また、初見の物品も扱えるようにするなど、より手法を一般化して実用性を高めていく予定です。

論文情報
[1] S. Arnold, M. Kuroishi, R. Karashima, T. Adachi and K. Yamazaki, "Recognising Affordances in Predicted Futures to Plan with Consideration of Non-canonical Affordance Effects", IEEE Robotics and Automation Letters, 2023. (URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/10025365)
[2] 動画: https://youtu.be/4naJ5IghHcg

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